「ニューヒューマン」が世界を変える~李承憲氏

2011年3月11日の東日本大震災以降、日本では、他者をいたわり他者のために行動するつながりに光が当たるようになりました。いまなお、自費で被災地にかけつけ、ボランティア活動をされている方々がいることに多くの人々が感動し、「絆」の和はどんどん広がっています。

韓国では昔から、私欲を捨てて、他者のために力を尽くす人のことを「弘益人間」と呼び、尊敬を集めてきました。李承憲氏は著書『息する平和学』のなかで、「『社会のために生きることが、自分自身を生かすこと』という考え方は、地球平和につながる」と語っています。

李承憲氏は、地球平和のために働く人が備える条件を5つ示しています。
1.体と心が健康である
2.良心的である
3.心のバランスがとれていて、安定している
4.生計を立てる能力を持っている
5.自らの言葉・考え・行動から良い情報を選択することができる

この5つの条件を満たした人のことを、李承憲氏は「ニューヒューマン」(新しい人間)と呼んでいます。『息する平和学』には、次のような記述があります。

「弘益の精神で地球愛、人間愛を実践する人がニューヒューマンであり、ニューヒューマンの力を結集させると、平和のパワーが生まれる。ニューヒューマンは明るく強い人だ。善良で、力のある人だ。自らの力を自分の利益だけでなく、社会全体のために使うという成熟した意識を持つ人だ。ニューヒューマンはパワーある脳を持っている。そんなパワーある脳をつくるのが、脳教育なのだ」

李承憲氏が提唱する脳教育は、ただ個人の目先の幸せを追求するための手段ではありません。そこには、地球全体を対象とした、壮大な愛と平和の実践が示されているのです。

平和のカギは脳の情報にある

世界中の人が望みながら、なかなか実現しない地球の平和。世界的な脳教育者で、平和活動家でもある一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、平和実現のカギを握るのは、「人間の脳だ」と言います。李承憲氏の著書『息する平和学』から、脳と平和についての記述を要約して紹介します。

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地球の平和を実現するカギは、人間の脳にあると、私は考えています。

人間の脳には、いろいろな種類や特性があり、その種類によって、つくられる情報が変わります。たとえば、歪んで暗い脳は、歪曲された暗い情報を生みます。明るく健康な脳は、健康的でポジティブな情報を作り出します。明るく健康な脳が集まると、健康的な社会と文明が生まれます。

世の中に生まれるとき、人間の意識は白紙です。しかし、年をとるにつれて、様々な情報が入ってきて、人間の意識は「観念」という殻で囲われてしまいます。この殻によって、本来の純粋な魂は遮られ、脳は真の自分の姿が分からなくなります。その結果、宗教や国家、富と名誉など、不完全な価値を絶対視するようになるのです。

このような脳は、観念や習慣という「仮我」(仮の自分)の壁にぶつかって、真我(本当の自分)の声を聞かなくなります。そして、真我を見失った脳は、自分の利益だけのために働くようになるのです。

自分の脳の主人になることができれば、否定的な情報から自らを守り、自分と社会を癒す肯定的な情報を生みだすことができるようになります。肯定的な情報を作れる脳は、自分をヒーリングし、社会をヒーリングすることができます。このような脳がまさに世界平和のカギです。パワーにあふれた脳は、平和を実現するために最も強力な道具なのです。

李承憲氏が語る「平和と呼吸」

世界各地で平和活動を展開している一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は著書『息する平和学』で、「平和と呼吸」について、次のように語っています。

<<李承憲氏著『息する平和学』(翻訳)から抜粋・要約>>

平和とは何でしょうか?当たり前すぎるような疑問ですが、実は、平和の定義ははっきりとしていません。

国ごとに、宗教ごとに、あるいは特定の集団ごとにそれぞれ望んでいる平和はあるかもしれません。しかし、人類全体が共有できる普遍的な平和の定義はまだ存在しないのではないでしょうか。

これまで、平和は主に政治や宗教の問題として扱われてきました。平和は個人が取り組むには大きすぎるテーマであり、一人一人のできることは限られていると考えられていたからです。

しかし、国家や宗教を中心とした平和や政治的・宗教的な信条に基づく平和は、不完全な平和です。国家や宗教が、平和どころか、大きな紛争の要因になってきたことは、歴史を見れば明らかです。平和を実現するためには、人類の意識が政治的な理念や宗教的な信条の限界を乗り越えなければなりません。

私たちに本当に必要なことは、自らが平和になることであり、自らが平和の存在になることです。自分の中にある無限な「平和の力」を体験せずに、他人に平和を伝えることはできません。

平和は、私たちの人生と遠くに離れた抽象的な概念ではありません。私たちの生命自体が平和であり、その象徴が呼吸です。呼吸の中には循環があり、リズムがあり、均衡があります。呼吸の循環、リズム、均衡が調和をなすことで、「生命体」という秩序をつくります。これが体と心の健康と平和をつくります。

平和とはすなわち、健康で調和のとれた生命の秩序なのです。

私たち一人一人が持っている生命体としての「健康と調和の原理」をそのまま社会全体に適用すれば、平和が訪れるはずです。

李承憲氏が語る「呼吸のリズム」とは

世界的な脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、呼吸のリズムが、人類の平和や健康のカギを握るといいます。

<<李承憲氏著『息する平和学』(翻訳)から抜粋・要約>>

1分くらい息を止めると、胸が苦しくなり、頭痛がしてきます。その後、止めていた息を吐き出すと、胸がスーッとして、頭もスッキリします。

ふだん、人は呼吸を当たり前のことと考え、呼吸の意味を深く考えようとしません。しかし、呼吸は、「生命とは何か」を気づかせてくれる力を持っています。

呼吸は、意識的にコントロールする必要がありません。放っておいても勝手にできます。もし呼吸をずっと意識しなければならないなら、眠ることもできなくなります。

「呼気と吸気」がリズミカルに繰り返される呼吸は、生命の法則であり、それ自体が完璧な循環です。私たちが意識してもしなくても、呼吸はリズムに忠実に従い、今この瞬間、私たちを生かせています。

こうした生命のリズムを「律呂(ユルリョ)」と呼びます。律呂は音階や音律をさす音楽用語として使われますが、もともとは、「宇宙の調和の根源」を意味します。律呂は、光と音と波長によって表されるエネルギーであり、天地気運です。

体中に起こるあらゆる生命活動は、律呂のリズムによって行われています。そして、ひとりの人生も、一国の歴史も、大きく見ればリズムによって動きます。リズムがどれだけ調和良く保たれるかによって、健康か否かが決まるのです。

国家、そして人類全体の平和も、呼吸のリズムがカギを握ります。個々人のレベルで呼吸の法則が守られると、心身ともに健康になります。そして、社会的なレベルで法則が守られるなら、社会全体が平和になります。

地球のために、全人類のために平和の祈りを捧げましょう

人類は、今転換期を迎えています。

人類の歴史の中で、これほど人々の往来が活発になった時代もありませんし、
これほど人々のコミュニケーションが盛んになった時代もありません。
これは、人類がこれまでとは全く違う、平和をもたらせるチャンスです。
全人類の平和の祈りを実現することが可能な時代になっているのです。

これまでの人類は、所属する国家・民族・宗教のような単位の中だけで生き、
その単位の外にいる人間と争ってきました。
李承憲氏がその事実をこう説明しています

「これまで人類は、個人や家庭、国家や民族、宗教などに最高の価値を置き、それらのために祈り、働いてきました。
しかし、地球のために祈り、働く人は多くありませんでした。それゆえ人類の平和は、単なる願望と祈りの対象にしかならず、現実的な力を持つことはできませんでした」

これからの時代は、地球のために、そして全人類のために
平和の祈りを捧げることが大切なのです。

一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著  『セドナの夢』 三五館出版、2011年発行、
46ページより引用

地球的規模で、平和の祈りを実践しましょう

人類の歴史は長い間、闘争の連続でした。

それでも最近は事情がものすごく変わりました。
かつては憎み合っていた国家の間でも、
交流を求める動きが広がっていますし、
現代は人類の歴史の中では、かつてないほど
地球的規模で強調する意識が高まっている時代になっています。

私たちはこれから、地球的規模で団結して、ともに平和の祈りをささげ、
平和の恒久的な実現のために、協力し合っていくことが望ましいでしょう。

李承憲氏の言葉にもあります。

「全人類がささいな制約を乗り越えられますように
そして私たち全人類は一つであり
みな地球に生まれて地球に住むものであり
インド人や韓国人やアメリカ人である前に
すべて地球の人間であることを悟ることができますように」

李承憲氏の言葉の通り、ひとりひとりが協力して、
団体や国の垣根を超えて平和の祈りを実践し、
人類愛・地球愛を広めていきましょう。

一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著 :『悟りの哲学』 ビジネス社出版、年発行、182ページより引用