今こそ、脳を宝箱にしよう

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は「脳をこれ以上ブラックボックスに放っておかずに、トレジャーボックス(宝箱)にすべきだ」と言います。

脳のブラックボックス化とは、人間が脳をどう使えばいいのか分からず、平和や幸福が実現できない状態です。一方、脳のトレジャーボックス化とは、文字通り、脳を「宝箱」として活用できることです。

李承憲氏は著書『脳がわかると幸せが見える』でこう語っています。
「宝箱の中にはあなたが探していた価値あるものがきっと入っているはずです。なぜなら、実はそれがあなたを探しだすように信号を送り続けていたからです。幸せを願うなら、幸せを築く方法を脳の中の宝箱で発見できます」

つまり、脳という宝箱は、あなたに開けてもらえる日を心待ちにしており、あなたがその気になれば、いつでも「宝」を差し出すことができるのです。

こうした脳の存在に気づき、活用するのが脳教育です。脳教育のプログラムによって、自分の考え方は生まれつきの性格からくるものだから仕方がないという考え方が変わり、成長できるのだと自信を回復できます。

どうしようもないと思うのも自分だし、成長できると信じるのも自分です。李承憲氏によれば、いずれも脳の一つの側面です。だからこそ、脳の使い方を知ることが大切なのです。脳の活用にこそ、個々人の人生がかかっており、ひいては私たち皆の未来がかかっています。

すべての脳は偉大である

私たちの性格や人格はどのようにして決まるのでしょうか。
脳教育者の一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、「性格も人格も、日常的な習慣の総合」であると述べています。
人間は、選択できる生き物であり、それを成し遂げられる偉大な脳を、生まれつき持っています。
そして、自分の脳の力を、信じるか信じないかによって、機能が発揮されるかどうかが決まると、李承憲氏は言うのです。

もしあなたが自分を変えたいと望んでいるなら、まず習慣を思い返してみましょう。

好きなことはなんですか。
嫌なことはなんですか。
どのように人と関わりますか。
どんな時に嬉しいと感じますか。
どんな状況で怒りますか。

1日24時間の、自分の習慣をひとつひとつ思い返してみると、ほとんどパターン化されていることに気付くと思います。

習慣は、連続する脳の情報処理方法とも言い変えることができます。
脳には、1000億個の神経細胞からなるシナプス(連結回路)によって、巨大な神経ネットワークが築かれています。
このネットワーク上で、脳からの命令がいつも同じルートを通ることによって起こるのが「習慣」と呼ばれるものです。
しかし、ルートを変更するよう脳に選択させれば、習慣は変えることができます。
これは脳が持つ素晴らしい機能のひとつです。
つまり、古いルートをそのままに、新たなルートを構築することができるということなのです。

このように人間は、古い習慣を残しつつ、新しい行動を選択することもできます。
脳が持つ機能を信じること―――それは、人生をより豊かなものにするための、最大の手掛かりだといえます。

「水昇火降」で自分を変える

変化を起こしたいのに、起こせずに悩んでいませんか?自分を変えたいと思っても、その方法が分からずに立ち止まっている人は多いようです。脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、自分を変える重要なポイントとして、「体と脳の疎通」を挙げています。

李承憲氏によると、変化を起こすには「意識」を変える必要があります。それはつまり、「脳」を変えることです。そして、脳の変化は、体を使うことではじめて実現するといいます。

脳は、必ず体を通じて情報を得ます。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの感覚器官を通して情報が脳に入ると、情報に脳が反応し、これによって脳に変化が起こります。脳が変化すれば、これによって体が再び反応します。この繰り返しによって、「意識」がつくられていきます。この体と脳のやり取りがスムーズに行われることで、意識が抜本的に変化しやすくなるのです。

体と脳が円滑に疎通する状態を「水昇火降」(すいしょうかこう)といいます。水昇火降とは、体の腎臓にある水のエネルギーが上にあがり、心臓にある火のエネルギーが下におりる状態です。水のエネルギーが上にあがると、頭がすっきりして澄んだ意識になり、火のエネルギーが下におりてくると、下腹の丹田を温かくして、全身の循環が良くなります。

水昇火降により、体内で火と水の調和が取れると、気力が充実し、体の理想的なコンディションになります。この状態が脳の活性化を引き起こし、ダイナミックな変化を生みやすくします。

李承憲氏にとって人生初の「創造体験」とは

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、人間の持つ欲求の中で最も大事なのが、「創造したい」という意欲だと言います。食欲、性欲、物欲が満たされても、創造性が死んでいる人は内面の満足を感じられません。虚しさに陥ります。

創造性が大事である理由は、創造性が人間の精神の最も大きな部分だからです。李承憲氏によると、創造性はだれにも生まれつき備わっており、創造性のない脳はひとつもありません。

李承憲氏の人生の最初の創造は、大学入試に失敗を繰り返して二浪している時に起こったといいます。つらい勉強の代わりにテコンドーや合気道に熱中していた頃、ある日、運動して帰る道すがら、村の一角に以前から積み上げてあった大きなゴミの山を見て、自分が片付けなければならないと思い立ったそうです。

それから1か月、李承憲氏は毎日ゴミを片付け、さらに、ゴミを肥やしにして山の上にかぼちゃを植えました。やがてかぼちゃの蔓は山の峠をすべて覆い尽くすようになったといいます。この体験をきっかけに、自信を回復し、勉強の意欲も取り戻し、翌年、大学に合格しました。ゴミを片付けてかぼちゃを作ることは、まさに「創造」だったのです。

創造性を発揮できずにいる人は多いです。しかし、李承憲氏によると、それは創造性がないのでなく、眠っているか、抑圧されているだけです。それを呼び覚ませばいいのです。

創造性を発揮するカギは、「意志」です。意志を出す瞬間、エンジンがかかります。創造のエンジンが止まらないように意志を折らないことが大切です。

人生の目標への集中こそが、真の脳活性をもたらす

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏によると、私たちの脳は集中することでパワーアップし、脳全体の統合がもたらされます。

最近、注意力や集中力がない子供たちが増え、ADHD(注意欠如・多動性障害)という障害に診断される子も多いです。乳児期からテレビやビデオのようなメディアに無防備に長時間露出していることなどが原因だと指摘されています。

李承憲氏は、「集中」は脳の活動の中で最も重要な基盤だと言います。集中によって脳機能が発達し、集中するほどに脳機能は強化されます。運動することで体に筋肉ができるように、集中によって脳に回路が形成されるのです。

集中とは、脳全体の機能が一つの情報処理に集約された状態です。集中というと、身じろぎもせず机に向かっていることだと考えますが、このような狭い視野の集中は、小さな集中です。このような「緊張した集中」は長く続きません。

李承憲氏によると、ほんとうの集中とは、テーマのある集中です。一つのテーマをめぐって脳全体が目覚め、視野が広く開けた「リラックスした集中」こそが、理想的だといいます。

といっても、テーマは何でもいいわけではありません。たとえば、ギャンブルに過度に集中すると、財産を失い、家庭崩壊へとつながります。アルコールや薬物への執着も同様です。これらは集中ではなく、対象の奴隷になっている状態です。

集中の対象として有益なのは、人生の目標です。人生の目標に集中したとき、脳は最も活発に働きます。自分の意志の力を最も強く、最も持続的に引き出すものが、人生の目標だからです。

脳に新しい習慣をつくる

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏によると、私たち人間の行動の大半は「習慣」にもとづいて行われるといいます。

山を歩く人たちが何度も踏んだところが道になるように、私たちの脳では、ある考えや行動を繰り返すと、それを処理する脳回路が作られます。いったん脳回路という道がつくられると、その道に入ってくる情報は、自動的に同じように処理されるようになります。これが、習慣のメカニズムです。

いったん脳回路によって習慣がつくられると、その通りに行動するのは簡単ですが、変えるのはたいへん難しくなります。習慣を変えるためには、その脳回路を遮断するか、新たな脳回路を作るしかありません。このうち、より簡単なのは、新たな脳回路を作るほうです。

例えば、タバコをやめたいときに、「タバコは体に悪いからやめよう」と考えると、吸いたいという欲求と衝突することになります。これが禁断症状です。一方、新たな脳回路を作るのは、脳の抵抗を受けずに済みます。健康のために運動を始めて、いつの間にかタバコを吸わなくなっているというのが、このパターンです。

脳回路を新たに作るにも、着実に続ける意志が必要です。少なくとも3週間以上かかります。脳に新たなニューロンが作られるのに、その位の時間が必要だからです。さらに、これが安定するまでは、もう1~2か月かかります。

李承憲氏は「自分の意志で新たな習慣を作っていく人が成功する人だ」と言います。新たに挑戦しようとすれば、最初は脳が驚いて抵抗しますが、抵抗よりも強く意志を立てると脳は意志に順応します。新しい習慣を作ることの積み重ねが、真の幸福や成功へとつながります。

自分を褒めて、脳の潜在力を引き出す

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、自分を褒めることで、脳の潜在能力が引き出せると言います。

みなさんは「人間は脳の10%も使っていない」「天才科学者のアインシュタインも15%ほどしか脳を使っていなかった」といった話を聞いたことがあると思います。

私たちが脳の何%を使っているのかという問題は、19世紀のある心理学者が初めて提起しました。この心理学者は「普通の人は脳の10%を使い、天才は15~20%を使う」と主張しました。以後、10%を6%だと主張する見解が出て、1990年代には1%、最近は0.1%という研究報告もあります。そうかと思えば、「脳はすでに100%使っている。ただ、どう使っているのかわからないだけだ」と主張する科学者もいます。

学者によって差はありますが、脳には計り知れないほどの潜在能力があることについては、意見は一致しています。では、どうすれば、その潜在能力を引き出すことができるのでしょうか?

そのヒントは、脳を肯定的にすることにあると、李承憲氏は言います。李承憲氏によると、脳は肯定の状態をより自然に受け入れるので、否定的な習慣が強く根付いていたとしても努力すれば必ず肯定的に変化します。

「最高の肯定は褒めることです。自分自身を自ら褒めてあげてください」と李承憲氏。学校で、職場で、家で、「よくできた」と言われなかったとしてもへこたれずに、まず自分で自分を褒めるのです。へこたれると脳が萎縮しますが、褒められると脳が活性化します。

また、周りの人に褒め言葉をかけることも大事です。他の人を心から褒めると、その言葉を聞いた人よりも褒めた人の脳の状態が良くなります。

脳に肯定的な情報を持続的に与えると、脳はそれに必ず反応します。だから、脳を褒めて、説得することで、脳はより多くの機能を開発するようになるのです。

「学ばなければ…」という呪縛から自由になろう

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、現代人は「学ぶ」ことに依存しすぎている面があると言います。「学んでいない」というのを口実にして、本当に大事な問題解決を先延ばしにしているのです。李承憲氏は「『学ばなければできない』という思い込みから自由になる時、自分が本当に願うことを選択でき、創造的な人生を送ることができる」と言います。

現代人は、生活を便利にするために学ばなければならないことがたくさんあります。仕事でパソコンを使いこなさないといけないし、銀行や地下鉄を利用するにも、難しい機械の操作を要求されたりします。だから、私たちは学ぶことに慣れており、学んだ通りにしなければ、不安になります。

しかし、本来、生命維持に必要なのは、息をし、水を飲むなど、学ばなくてもできるような単純なことばかりです。生命と直結している心拍、血圧、体温などは、私たちが気にしなくても勝手に動きます。私たちは生きるためにとても多くのことをしているようですが、実は「生」に最も重要なことは、学ばなくても自ずと実行できるのです。

李承憲氏によると、この自然なさまが創造性の源泉です。学ばなければできないという考えから自由になることが創造的な人生の始まりです。学んで得られる知識は、目的を達成するための判断材料として使うべきものであり、目的自体を選択するために必要なものではありません。学ぶことは選択のために必要なものではなく、選択したことを成し遂げるために必要なのです。

「PDCA」の実践が人生を成功へと導く~李承憲氏

一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は、成功するためには、「PDCA」と呼ばれる行動のサイクルを実践することが大切だと言います。PDCAとは、「Plan, Do, Check, Action」のことです。目標を立て、実行にするまでの一連のプロセスとして、ビジネスの世界でも重視されています。

PDCAの第一歩は、目標を決めることです。すなわち、Plan(正確な目標)の策定です。「体重を5キロ落とす」、「1日の成果を2倍に増やす」などの目標こそが、成功するうえで最大の武器になります。

次に、目標という武器を管理し、使うための戦略(Do)が求められます。戦略を作ることにより、武器をよりうまく活用することができます。

次のプロセスがチェック(Check)です。多くの組織や人々が目標を達成できない理由の一つは、PlanとDoを繰り返すだけでCheckをないがしろにするからです。自分だけでなく、複数の人にチェックしてもらえば、なおさら効果的です。

そして、最後がアクションです。あなたに夢があるなら、夢には常に影があります。その影とは「障害」です。大きな夢であるほど、障害も大きいはずです。それを乗り切る行為が、アクションです。

李承憲氏は「自分にやってくる多くの逆境を避けず、甘んじて受け入れる人には未来があるが、避ける人には未来がない」と言います。つまり、自分の人生を本当に大事に思っているのか、そうでないのかは結局、あなた自身の選択にかかっているのです。

目標を掲げ、脳の変化を引き寄せる~李承憲氏

脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏によると、脳には「変化しにくい」という特性と、「変化しやすい」という特性の両面があるといいます。その二面性をしっかりと認識したうえで、脳に大きな変化を起こすべきです。

私たちの脳は絶え間なく変化しています。外部から新しい刺激を受けると、それに対応する脳回路がつくられます。

その一方で、いったん脳回路が作られると、それ以降、同じような刺激が外部から入って来たときは、同じ回路が処理を行います。これが繰り返されるごとに、その回路は強くなり、やがて習慣となります。習慣化することで、脳は効率よく情報を処理します。

習慣として作動するようになった脳回路は幅をきかせるようになります。自分で何かを「変えるべきだ」と考えても、脳はそれを誤った信号として受け止め、同じ脳回路を使おうとします。そのほうが、脳にとってはラクだからです。これが、多くの人が思うように変化を生むことができない理由です。

しかし、小さな変化でも脳に起こすことができれば、その変化は別の脳回路にも影響を及ぼし、また次の変化を招きよせます。強い意志さえあれば、ドミノ倒しのように脳に変化をもたらすことができるのです。

自分の目標さえしっかりしていれば、脳に変化は起こせるはずです。だから、李承憲氏は「目標を持とう」と訴えます。目標が明確でなければ変化の方向をつかめず、脳はそれまでの習慣に執着しようとします。まずは、はっきりとした目標を掲げることが大切です。