脳が信じれば、実現する

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

脳トレーニングによって覚えられること。それは、自分自身を信じることです。

長い間、人間は肉体にばかり関心を向け、脳についてはあまり注目してきませんでした。しかし、科学の発展とともに、脳の機能の重要性がしだいに明らかになっています。

脳は体のすべての部分をつかさどります。体の各器官から伝えられる情報を脳が受け、処理します。脳に与えられた情報が架空の内容であっても、脳がその情報を信じていれば、体はその情報に従います。

脳を動かすのは情報です。脳が信じた情報によって、体は動かされる。脳トレーニングは、こうした脳の特性を生かし、人の潜在能力を引き出します。脳トレーニングによって自分自身を信じることを覚え、創造力が最大限に発揮できるようにするのです。

「自分は元気でいる」「自分は幸せでいる」という情報を脳にたくさん与えてあげましょう。そうすると、体と心がほんとうに元気になり、幸せになれます。そのプロセスを手助けするのが、脳トレーニングなのです。

「気づき」によって「脳の主人」になる

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

「気づき」によって「脳の主人」になる

人は、気づきを得ることで、自分自身の脳の主人になることができます。

体は脳の延長です。脳から全身に広がる神経網を通じて、体は脳の命令を受けています。心もまた、脳の中で起きる作用です。脳がなければ心もありません。ですから、「脳がすなわち私」といえます。

脳の状態を常に見守り、コントロールする「意識」というものがあります。意識は脳の運転手のようなものです。車を走らせるのに運転手が必要なように、脳を上手に活用するためには、この「意識」が必要です。

意識が目覚めることを「気づき」といいます。気づきを得ると、暗い部屋に電気をつけた時のように目の前がパッと明るくなって、自分自身や自分を取り巻く状況を鮮明に見ることができます。

気づきを得た脳とは、「主人がいる脳」です。主人がいる脳は、感情や外からの情報を能動的に処理することができます。脳が生存本能や習慣に基づいて情報を処理しようとするとき、主人がストップをかけ、別の選択をします。

気づきを得た脳は、利害関係や損得勘定にこだわらない判断ができます。慈悲深い心を持ち、健康で幸せで、世の中を平和にしようとする意志に満たされます。たとえば、沈没寸前の船で、自分のかわりに見知らぬ人を救命ボードに乗せるような行為は、「脳の主(あるじ)」になっているからこそできる判断です。

一方、気づきを得ていない脳は、「主人のない脳」です。主人のいない脳は、感情に振り回され、目先の情報に引きずられやすいです。脳は「良い脳」と「悪い脳」に分かれません。「主人がいる脳」と「主人がいない脳」に区分されるのです。

脳トレーニングの呼吸法で治癒力アップ

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

脳トレーニングの目的の一つは、免疫力を高めることです。脳トレーニングの呼吸法で、人間が本来持っている自然治癒力を取り戻して下さい。

科学や医学は日々進歩しているのに、人間の病気の種類は増えています。平均寿命はのびていますが、病気に苦しみながら生きている人が大勢います。長い寿命がすなわち健康な人生とは限りません。

野生動物も病気にかかります。しかし、病気が原因で死ぬことはあまりありません。病弱になり始めるころには、もうすでに他の動物に食べられるか、自分で治癒するからです。野生動物には、水や太陽、泥、植物などを利用して自ら病気を治す自然治癒力があります。たとえば、ケガをしたときは傷口を舌でなめたあと日差しに照らし、皮膚病になったら泥で洗います。

人間が様々な病気に悩まされる理由は、自然治癒力の低下です。もともと、人間もすばらしい自然治癒力を持っています。しかし、環境ホルモンで汚染された食品や化学物質に満ちあふれた生活環境、日々のストレスなどによって、免疫力が弱くなるのです。

自然治癒力を高めるうえで大切なのは、「感覚」の目覚めです。体が発するメッセージを敏感に感じとり、迅速に反応する脳の感覚が必要です。

感覚を目覚めさせるのに役立つのが呼吸法です。呼吸がしっかりとできていれば、体内のエネルギー循環がスムーズになり、体の機能が活性化されます。その結果、自然治癒力も高まります。

呼吸法のなかでも、イルチブレインヨガの脳トレーニングの一つである「精充呼吸(せいじゅうこきゅう)」は、呼吸によって感覚を目覚めさせるのにたいへん有効です。

精充呼吸は、尾てい骨を前方上の方向に引き上げながら行う呼吸法です。尾てい骨を巻き上げるようなイメージで、吐き出す息にしっかりと集中します。精充呼吸によって脳の感覚が目覚め、体の全体的な機能が活性化し、自然治癒力が高まります。

脳トレーニングで「習慣や情報」を変える

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

運動をすると筋肉が発達するように、脳トレーニングをすると心が変わります。その理由は、脳と心が密接に関係しているからです。

心をテーマにした本や論文は数えきれないほどあります。宗教や哲学、心理学、自然科学など、さまざまな分野の専門家が心について研究してきました。それでも、心にはまだ謎が多いです。

一ついえるのは、心が何であれ、脳がなければ心の作用もあり得ないということ。脳があってこそ心がある。脳は心が活動する舞台なのです。

脳と心の関連性を示すエピソードがあります。

建設業一筋で働いた後に引退した男性が、ある日、脳出血で倒れ、手術を受けました。すると、手術後、以前にはまったく興味のなかった絵と彫刻に没頭し始めました。一日中絵を描き、彫刻をする生活にすごく満足しているそうです。

認知症になってから美術的な才能を発揮する人や、パーキンソン病を患った後に詩に心酔する人もいます。

こうした事例で分かるように、人の特性は、脳と緊密な関係があります。事故や中毒、疾病などで脳に変化が起きると、心も大きく変わるのです。

人の習慣や感情は、脳に入力された情報の結果にすぎません。だから、入ってくる情報を変えることで、習慣や感情も変わります。それを意識的に行うのが、脳トレーニングです。

脳トレーニングでは、誤った情報や自分の力を弱めるような情報は排除し、自分の成長につながる情報を積極的に取り入れます。それが、心の変化をもたらします。

瞑想法でセロトニン増加、気持ちもすっきり

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

瞑想法というと、外部からの情報を遮断して、ひたすら自分の内側だけを見つめる行為と思われがちです。でも、実は瞑想は、むしろ脳に情報や刺激を積極的に与える行為です。

目や耳などの五感を通じて脳が日常的に得ている刺激の中から、肯定的なものを選ぶことで、脳に変化をもたらす。それが瞑想法です。

瞑想をするときは、まず目をとじてみてください。まぶたを閉じた瞬間、現れた闇を宇宙空間とイメージします。その深い闇を眺めながら、鼻の先から出入りする息を感じ取ります。

そうしていると、脳は、無数にある神経細胞(ニューロン)どうしの結び付きを強め始めます。ニューロンが結合すると、脳の情報伝達がスムーズになります。

ある実験では、仲間たちと一緒に暮らしていたネズミと、一匹だけで暮らしていたネズミの脳を比べたら、仲間と一緒にいたネズミのほうが、ニューロンがより多く結合していました。これは、仲間と一緒にいることで脳により多くの刺激を受けているからだと考えられています。

ニューロンの結合とともに、脳の情報伝達に重要なのが、神経伝達物質。脳は数十種類を超える神経伝達物質を分泌しますが、このうち、瞑想すると増えるのがセロトニンです。

セロトニンは私たちを幸せな気分にさせてくれます。セロトニンが多く分泌されると、意欲と活気にあふれます。セロトニンが少ないと、憂うつで、怒りっぽくなります。

瞑想をすると気持ちがすっきりするのは、脳に刺激を与えることで、セロトニンが湧き出るからなのです。

瞑想法で欲望の迷走を止める

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

「~したい」という気持ちで頭がいっぱいになってしまったときは、瞑想法が効果的です。瞑想をすることで、欲望に振り回されないしっかりとした脳に切り替えることができます。

食欲、性欲、知識欲、収集欲、支配欲、名誉欲、権力欲・・・。人間にはさまざまな欲求があり、欲求を満たしたときの快感が人間を突き動かします。美しいもの素晴らしい味、素敵な音楽、性的な快楽は、人間の歴史をつくる原動力になってきました。

その一方で、人間を破滅に導きかねないのが、欲望の怖さ。体に悪いと分かっていてもタバコのニコチンを求めたり、命に危険を及ぼす麻薬を欲したりするのはその一例。人間は、欲求が満たされたときの快感に酔いしれるだけでなく、欲求自体に快感をおぼえてしまう習性があるのです。

欲求を生みだすのは、ほかでもない、脳です。体に悪いことを欲するのは、脳が暴走した状態。そうした状態に陥る原因は、脳の中に「主」がいないからです。主がいないと、脳は情報を選択するための基準を失い、五感から入ってくる情報や欲望に振り回されてしまいます。

性、タバコ、お酒、麻薬、賭博などの中毒の治療は、まさにこの「主」がしっかりと機能するかどうかにかかっています。

主を呼び覚ます効果的な方法の一つが、瞑想法です。瞑想をすれば外部から入ってくる刺激が止まって脳波が安定し、自らの脳の感覚が目覚めます。脳の感覚が目覚めると、私たちは外部からの情報に対して主体的に反応できます。

瞑想法によって、自らの脳の主になって下さい。

脳活性化の意外な秘訣、それは「愛」です。

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

愛することは、脳活性化にたいへん役立ちます。何かを愛する状態は、ある対象にとても集中している状態です。集中すれば脳回路が活性化し、脳全体の機能が活性化されます。

「くしゃみと恋心は隠せない」と言われます。恋におちると、笑顔があふれて表情が明るくなり、足取りも軽快になります。その変化は、周囲にとって一目瞭然になるときもあります。

恋をしたときの体や表情の変化は、神経伝達物質の作用によるものです。恋をすると、脳からドーパミンという神経伝達物質が吹き出し、脳を喜びで満たします。時間とともにドーパミンの分泌量は減りますが、代わりに安定した満足感を与える別の神経伝達物質が増加します。

人間の愛の対象は、恋人だけではありません。家族、友達、仲間、動物、そして組織に対しても愛情は生まれます。対象が何であれ、愛を抱いていると、脳にエネルギーが供給され、集中力が高まります。その状態が続けば、脳回路の働きが活発になり、脳活性化がどんどん促されます。

何かを愛する状態では、脳は力が発揮され、逆に、何も愛していない状態では脳は力が落ちる。その理由は、愛が脳回路を活発にするからです。脳には愛する状態を好む特性があって、愛する対象を求めているのです。

よく食べてよく寝ているのに、なぜか頭がさえない、なんて感じるときはありませんか?その原因は、愛するという行為から遠ざかっているからかも知れません。脳活性化の秘訣は、「愛」だということを覚えておいて下さい。

脳トレーニングで夢を実現する脳回路を開拓しよう

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

私たちが受け取る視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚(きゅうかく)といった五感の刺激は、すべて脳に伝わります。目、鼻、口、耳、皮膚から伝わる情報は膨大ですが、脳はこれらを常に受け取り、処理しています。脳トレーニングでは、この処理のパターンを変えることができます。

脳は膨大な情報量を扱うのに慣れているため、長い間にわたって情報が遮断されると、異常をきたします。昔から懲罰を与えたい人を独房に閉じこめていたのは、極度に狭くて暗い部屋で情報を遮断することで、脳に苦痛を与えるためです。

しかし、人間の脳の情報処理の多くは、いつも決まった脳回路を使って、同じような処理のし方をします。こうした脳の習慣化された処理パターンが、私たち一人一人の性格や個性となって表れます。

ところが、こうしたお決まりの処理だけだと、脳の本当の力は発揮されません。一人の人間が持つ脳細胞の数はおよそ1,000億個。そして一つの脳細胞からは1,000個の枝が伸びています。1,000億個✕1,000個は、まさに無限大といえる数値。これらの脳回路の多くが使われないままなのは、脳の活動が習慣的なものにとどまっているからです。

脳回路の活動パターンを変えることで、眠っている脳回路を活用することができます。それを実現するのが、脳トレーニングです。脳トレーニングでは、外から入ってくる情報に対して受け身で反応するのでなく、「健康」「幸せ」「平和」といった願望の実現につながるものを選択し、能動的に処理します。こうした活動を通じて、使われていなかった脳回路がどんどん開拓されていくのです。

「水昇火降」で健康生活を!

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約~

私たちの体の中には、「水」のエネルギーと「火」のエネルギーがあります。体が健康でいるのは、水のエネルギーが上昇して、火のエネルギーが下降しているときです。

人は激しく怒ると、頭に血が昇って、沸騰したやかんのようになります。顔も赤くなって目もかっかと燃えます。

古代中国から伝わる「陰陽五行(いんようごぎょう)」の考え方からいうと、頭に血が昇っているのは「火」のエネルギーが上昇した状態。これは、体にとって好ましくありません。脳の中で血液が停滞してしまい、エネルギーが循環しなくなるからです。

体にとって望ましいのは、その逆。つまり、頭が涼しくなっている状態です。これを、「水昇火降(すいしょうかこう)」といいます。水昇火降では、「火」のエネルギーが体の下に降りて、「水」のエネルギーが脳まで上昇。頭はスッキリして思考力がアップし、体もあたたまって免疫力が高まります。

人間の体内では、水のエネルギーは腎臓から出て、体の背面の督脈(とくみゃく)を通って上昇します。一方、火のエネルギーは心臓から出て、体の前面の任脈(にんみゃく)を通って下ります。

頭がカッカとしているときには、任脈が詰まっています。こんなときは、両手を軽く握って、任脈が流れている胸の真ん中あたりをトントンとたたくと、詰まりが解消され、気分がすっきりします。胸をたたくときに、口から「は~」と息を吹きかけるように吐き出すと、さらに効果的です。

「感情」という波を自在に操るサーファーになろう!

~一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)著『脳がわかると幸せが見える』から要約

感情に振り回されて生活していませんか?
後ろ向きで、否定的な感情に心が支配されていませんか?
感情を自分の意志でコントロールできれば、もっと明るく、幸せになれるはず。
脳教育が、感情を自分の思い通りに動かす力を養います。

感情、思考、意識、心など、人の精神に関する言葉はいろいろあります。日常生活では、何となく使っている言葉ですが、脳科学では、明確な定義があります。感情とは「大脳辺縁系で起きる反応」、思考と意識は「大脳皮質の作用」、心は「脳の総体的な精神作用」です。

この中で、感情は、人間が生きていく上で最も表面に出やすいものです。感情には、怒り、不安、恐れ、恐怖、悲しみ、喜び、楽しさなど様々なものがありますが、ときに突発的で不安定な性格を持っています。このため、「感情的」という言葉には、どこか否定的なニュアンスがあります。

感情を上手にコントロールするには、二つの方法があります。一つは、感情を「調節」すること。サーファーになった気分で、感情という波をうまく乗り切り、楽しむことです。そうすれば、感情に振り回されずに済みます。

もう一つ、感情とうまく付き合う方法は、感情を「創造」することです。自分の感情を自ら創り出すのです。たとえば、否定的な感情に陥りやすい人は、肯定的な感情を創造することで、より前向きに生きられます。

人間はどうしても、外部の否定的な情報に敏感に反応してしまいます。こうした反応が習慣になると、脳は常にネガティブな感情に支配されてしまいます。

自分の関心をより肯定的なことに向け、能動的に感情を創り出していく。そうした経験を積み重ねることで、脳はポジティブな感情で満ちあふれるようになります。

こうした作業には「意志」が必要です。逆にいえば、意志さえあれば、自分の感情を思うようにできるのです。