十年は若返る李承憲氏の健康歩行法

歩く姿勢を見れば、その人の健康状態がわかります。

体の弱い人や健康状態のよくない人は、ほぼ外股で歩きます。一名*ヤンバン(両班)歩きとも言われる外股歩きはエネルギーがスースーと漏れる歩き方です。つま先を外側に開いた状態で歩くので、自然にかかとに体の重心がのせられ、腰に力が入るようになります。この姿勢で長く歩くと、股関節が歪み、椎間板ヘルニアか腰痛で筋肉や骨に無理をきたし、体形が変形するようになります。

また、エネルギーの通り道である経絡が詰まってしまうため、血液循環を始め、脳脊髄液の流れがスムーズに流れなくなります。この状態で長く歩けば歩くほど、頭は重くなり、疲れてきます。また、足に痛みを感じたり、ひどい場合には足にけいれんが起こったりもします。

それなら、最も理想的な歩き方は何でしょうか。大体、気力が充満している人は、両足のつま先を数字の11の形にそろえ、両膝が軽く擦れるように歩きます。つま先をそろえると、足と下腹部の丹田に力が入り、背中もまっすぐに伸びるようになります。脊椎が正しくなると、人体のエネルギーと血液の循環が円滑に行われ、消化や排泄能力が向上し、脳脊髄液の流れが良くなり、頭がさえてきて、頭の回転も速くなります。

仙道トレーニングを始めとする丹無道、合気道、テコンドーなどを、長い間鍛錬してきた上級者たちは、普段歩くときもエネルギーが分散しないよう、気をつけながら歩きます。つま先をそろえて、数字の11の形でまっすぐ足を踏み出すのです。「数字の11歩き」は人体に流れている気の流れをつかさどる歩き方で、ジャンセンウォーキングのもっとも基本となる歩き方です。数字の11歩きが習慣になると、膝が丈夫になり、足に力がつくだけでなく、日常生活でもあまり疲れを感じなくなります。また、正しい姿勢で歩くので、全身の動きに無理がなく、血液循環がスムーズになり、体がますます軽くなって、歩くことにも自信が出てきます。

正しい歩き方は人を美しく元気にさせます。自己管理を徹底的に行った人は、七十歳になっても背筋がピンと伸びており、歩く姿勢も整っています。実際の年齢より若く見える人、年を取っても情熱と覇気にあふれている人は、言うまでもなく皆が数字の11歩きで歩いています。数字の11歩きで、尾てい骨を少しまるめれば、命門のツボ(へそから腰の後方へまっすぐのばしたところ)が中に入ることにより、立った姿勢はもちろん座っている姿勢までも垂直になり、しゃんと伸びます。腰がまっすぐ伸びていれば、腎臓の精気が充満し、疲れを感じず元気旺盛に活動することができます。

これからは、足をきちんと数字の11の形にし、ゆっくり歩いてみてください。歩くときは、自分の歩き方にだけ集中します。数字の11の形につま先を揃えるだけで、足と下腹部の丹田に、力が入ってくるのを感じることができます。しゃんとして歩けば、歩くたびにエネルギーが蓄積され、健康になるのはもちろん老化を防ぐこともできます。仕事中に疲れて力が出ないとき、ひどい頭痛のとき、初期の関節炎のとき、こういうときはつま先を数字の11の形に揃えて、湧泉と足の指をぎゅうぎゅう押しながら歩いてみてください。特別に薬を飲まなくても、症状が大幅に好転することを実感することができます。

*ヤンバン-高麗・朝鮮時代の支配階層。朝会のとき、南向きに座っている国王を中心に、文班は東側に、武班は西側に立っていたが、この二つの班列のことを両班と言う。

一指 李承憲(イルチ・イ スンホン)著  『ジャンセンウォーキング』 講談社出版、2008年発行、112ページより引用