愛の第1段階「孝」

東洋の文化では、愛の対象によって、または意識の成長段階によって愛の進化を3つに分けています。両親への愛である「孝」、国や団体への愛である「忠」。人類と宇宙への愛である「道(タオ)」です。

愛の対象が個人から団体へ、団体から宇宙へと広がるにつれ、意識も拡張していきます。これを「愛の進化」といいます。

愛の進化過程の第1段階は、個人を愛する段階「孝」です。孝という文字は、「老」と「子」が結合して子供が自分の親を助け仕えることを示しています。これを現代風に表現すれば、子供が愛情をもって親の面倒を見ることです。孝は、生み育ててくれた親の崇高な愛や献身への感謝と恩返しの自然な表現であり、義務感ではありません。

紀元前4世紀の中国の有名な思想家の荘子は「親を養う孝行は簡単だが、親を愛する孝行は難しい」と言いました。本当の孝行は、慈しみ深い真心から出るものでなければならないという趣旨です。物質的に親を養うだけでなく、無条件の愛から出る精神的な一体感と感謝を表現するのです。

世の中を眺める観念は、幼児期に定着します。家族の会話がなくなり、精神的な連帯感が弱まり、親が子供に模範を示せないでいると、より明るく調和した社会を作るために必要な中心価値を子供に教育できなくなってしまいます。

家庭は、各自の魂の成長のため、そして、その成長をサポートしあうために集まったひとつの小さな訓練場といえます。このような観点で家庭を見ると、子供の教育にあたっては、成功し出世しなければならないという教育ではなく、人間の基本的な品性と道理を教えることが重視されるべきです。

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