脳教育者、一指 李承憲(イルチ イ・スンホン)氏は30年以上に渡り、現代の教育のあり方の見直しを提唱してきました。その核となる主張の一つが、学校の成績や試験に偏重した教育から、「弘益精神」を養う教育への転換です。
学校教育では勉強のできる上位5%の子供だけが優等生として扱われ、残りの95%の子供たちは落第として判定されてきました。しかし、こうした成績重視の教育は、子供たちを絶え間ない競争へと駆り立て、そこから脱落した子供たちは自尊心が大きく傷つけられるという結果を生んでいます。
李承憲氏は、成績という単一の尺度ではなく、それぞれの人が持つ無限の価値や創造力を評価し、育てるべきだと指摘しています。
李承憲氏の脳教育では、「成績」よりも、子供の脳で何が起こっているのかに関心を向けます。大事なのは、脳がネガティブになるのではなく、ポジティブな状態であること。そのために、脳にポジティブな刺激を与えられる環境を提供することが、教育者の役目だといいます。脳がポジティブな情報で満たされていれば、豊かな人間性が養われ、一人ひとりが輝くことができます。
脳教育の基礎となるのが、弘益精神です。弘益精神とは、人をあまねく利するという精神であり、社会のために尽くす姿勢です。教育界において弘益精神を重視する考えが広まれば、貧富の格差や戦争、宗教間の紛争、飢餓、環境汚染といった問題の解決にもつながるはずだと、李承憲氏は言います。教育改革は、すべての出発点なのです。
一指 李承憲著『脳教育原論』より