「エゴの目」から「道の目」へ

「あなたは、楽観的ですか、それとも悲観的ですか?」。もし両方だと思うなら、別の尋ね方をさせて下さい。「デフォルト・モード(規定値)はどちらでしょうか?」。

いま、家の外から聞いたことのない大きな物音がしたとします。あなたが最初に思いつくのはどのようなことでしょうか?その物音は、空からお金の入ったカバンが落ちてきた音かもしれません。しかし、普通はそのような楽天的な見方はしないでしょう。

これが脳のデフォルト・モードです。心理学では「負のバイアス」として知られています。警戒の状態であり、悲観的な予測の一種です。人間に組み込まれたこの反応は決して悪いものではなく、人類は自分たちの生存を脅かす物事(ストレス)に対して自分たちを守ることを進化の過程で学んできました。

脳がいったんストレス反応モードになると、その人の関心はいかに生き残るか、勝つか、「相手」を倒すかということに集中します。このモードにおいては、私たちは皆それぞれ、異なる存在であり、他者(自分以外の世界)は潜在的脅威です。よって、彼らを倒すためには彼らより強くならなくてはなりません。

しかし、世界中でさまざまな問題が起こっている現状を目撃している私たちは、この見方が正しく妥当なものであるかを再検討しなければなりません。

相互に敵視し、脅威である別個の存在の集まりとして世界を見る目から、全体の中で分かち難くつながった存在のネットワークとして世界を見る目への転換が必要になっています。私はこれを、エゴの目から「道」(TAO)の目への転換と呼んでいます。

全てはつながっており、別個の存在というのは幻想です。私たちはバラバラの存在ではなく、全体として進化しながら生きているのです。